『家族シネマ』で芥川賞を受賞したことで有名な存在である、作家の柳美里さん。
しかし、そんな柳美里さんには、もっとすごい業績があったのでした。
なんと、柳美里さんは、『JR上野駅公園口』によって、アメリカでもトップレベルの文学賞である全米図書賞を、見事、受賞していたのですね。
そこで、この記事では、そんな『JR上野駅公園口』について、取り上げていきたいと思います。
『JR上野駅公園口』のネタバレあらすじとは、はたして、どうなっているのでしょうか。
『JR上野駅公園口』の感想や、全米図書賞の受賞理由についても、チェックしていきましょう。
もくじ
柳美里の経歴
柳美里さんは、1968年6月22日、神奈川県の出身で、2021年1月現在の年齢は、52歳となっていました。
在日韓国人だった柳美里さんは、高校をいじめに遭って中退してしまったものの、その後、ミュージカル劇団の東京キッドブラザースに入団して、舞台女優となります。
柳美里さんは、それから演出助手を経て、青春五月党という演劇ユニットを設立したほか、『水の中の友へ』によって、劇作家と演出家としてデビューすることになりました。
劇作家としては、1993年、『魚の祭』によって、岸田國士戯曲賞を受賞。
なお、これは最年少での受賞記録だったのですね。
一方で、柳美里さんは、1994年、『石に泳ぐ魚』によって、小説家デビューも実現。
1996年、『フルハウス』によって泉鏡花文学賞、野間文芸新人賞を、1997年、『家族シネマ』によって芥川賞を受賞するなど、活躍していったのです。
1999年には、ラジオ番組『柳美里のオールナイトニッポン』によってギャラクシー賞奨励賞、『ゴールドラッシュ』によって木山捷平文学賞、さらに2000年には、『命』によって編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞するなど、すっかり実力派の作家となっていった、柳美里さん。
こうしてキャリアを重ねていった柳美里さんは、2020年、とうとう、『JR上野駅公園口』によって全米図書賞を受賞するという、偉業を成し遂げたのでした。
これまでに柳美里さんが発表してきた作品は、実に多数に及んでいます。
小説では、『水辺のゆりかご』、『女学生の友』、『ルージュ』、『雨と夢のあとに』、『ねこのおうち』など。
エッセイでは、『家族の標本』、『窓のある書店から』、『NOW and THEN 柳美里──柳美里による全作品解説+51の質問』、『NHK知るを楽しむ私のこだわり人物伝 色川武大 穏やかにアウトロー』、『貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記』など。
そして戯曲では、『静物画』、『向日葵の柩』、『グリーンベンチ』、『魚の祭』、『町の形見』など。
それでは、続きましては、そんな柳美里さんの全米図書賞受賞作である『JR上野駅公園口』について、じっくりと見てまいりましょう。
『JR上野駅公園口』(柳美里の全米図書賞作品)のネタバレあらすじ
主人公の男は、福島県の豊かとはいえない農家に生まれました。
生まれた日は、奇しくも、上皇陛下とおなじ、1933年12月23日。
戦後になって、そんな男は、12歳という若さにもかかわらず、出稼ぎに出ることになります。
成長した男は、やがて幼なじみの女性と結婚。
そして、またしても偶然、天皇陛下の誕生日である1960年2月23日に息子が生まれたのでした。
男は、上京して、東京オリンピックの会場の建設現場で働きますが、息子はたった21歳で夭折してしまうことに。
しかし、それでも男はけなげに還暦まで働いていき、それから帰郷したのです。
もっとも、男の余生は激動のもので、嫁に急に先立たれてしまったうえ、ふたたび上京すると、上野公園でホームレスになってしまったのでした。
やがて男は、上皇陛下が乗った車に手を振るのですが…?
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『JR上野駅公園口』(柳美里の全米図書賞作品)の感想
以上が『JR上野駅公園口』の内容ですが、タイトルからは想像がつかない、きわめてスケールの大きなストーリーですね。
一般人の男性が、上皇陛下と奇妙な符号がある人生を歩んでいくさまを通して、戦後の日本の問題が活写されていくという、非常に重厚な内容でした。
これなら、社会性を鑑みても、全米図書賞の受賞は当然だといえそうですね。
それにしても、よくこんな話が思いつくものだと、感心せずにはいられません。
『JR上野駅公園口』(柳美里の全米図書賞作品)の受賞理由
さて、柳美里さんの『JR上野駅公園口』が全米図書賞を受賞した理由は、何だったのでしょう。
日本人が全米図書賞を受賞したケースとしては、1971年の川端康成さんの『山の音』、2018年の多和田葉子さんの『献灯使』がありました。
いずれも業績のある作家ですが、多和田葉子さんは、比較的最近で、しかも柳美里さんとおなじく女性なのは、注目に値することでしょう。
文学的な基準は当然として、女性の社会進出も後押しされる一因になったのでしょうか。
全米図書賞を日本人が受賞するとは、なんとも誇らしいものですよね。
しかも、数年間で2人も受賞したのは驚嘆すべきことでしょう。
この機会に、ぜひ、柳美里さんの『JR上野駅公園口』をご覧になってみてはいかがでしょうか。